FUJIFILM X-H2Sレビュー EOS R3、Z9との比較も

FUJIFILM X-H2Sレビュー

ドッグフォトグラファー八木橋です。

こちらのブログには、撮影機材の記事はほとんど無かったのですが、飛行犬撮影所は多様な撮影機材を使用しているので、撮影機材の記事も必要としている方もいると思いレビュー記事を書きました。

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社から、発売されたばかりのハイエンドカメラX-H2Sと、レンズXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRのデモ機をお借りしてました。写真の上のレンズが細い方が、デモ機X-H2S XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR。下のレンズが太い方は、飛行犬撮影所所有のデモ機と同じ機種のカメラX-H2S 縦位置バッテリーグリップ VG-XH付。レンズはXF200mmF2 R LM OIS WR 専用テレコンバータXF1.4X TC F2 WR付です。

X-H2Sは、APS-Cミラーレス機のハイエンドモデル。裏面照射積層型センサーと高速画像処理エンジンにより、最速40コマ/秒のブラックアウトフリー高速連写やAIによる被写体検出などが可能な高性能AFを実現。飛行犬撮影所としては、高速連写とAF性能が重要なので、主にそれらをテストしました。

FUJIFILM X-H2Sレビュー

飛行犬撮影所は、ペット撮影としては数少ないハイエンド撮影機材を使用して撮影するのが売りの撮影サービスのため、ハイエンド撮影機材は多数所有しております。その中でも、比較的新しいミラーレスハイエンド撮影機材として、Canon EOS R3、Nikon Z9を、Fuji X-H2Sと比較するために選定しました。すべて、高性能な積層型センサー搭載機です。

比較と言っても、撮影対象の犬は一定の速度・コースを走るわけではないのと、被写体検出を使ったAFはカメラ機種毎に動作が変わるため、厳密には同一条件での比較はできません。何度も何度も繰返し撮影して(暑いため、犬は1頭につき基本的に1回しか走らせてません。参加の犬は多数います)、傾向や印象を語る事しかできません。

FUJIFILM X-H2Sレビュー

テストは7月16日~18日に、埼玉県幸手市のドッグラン ドッグパーク幸手にて、カメラマン2~4人で同時撮影をしました。7月17、18日は特に暑く、酷暑とも言える状況だったため、わんちゃんに負担をかけないよう、走る回数を極力減らす事が重要で、そのためにもチャンスが多いAFの精度と高速連写が重要になります。

被写体検出について

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRの被写体検出

 

上の動画は、X-H2SのHDMI出力からキャプチャーボードに繋ぎ、ファインダーに表示される映像を録画しました。被写体検出は、全てのカメラで動物を選択。

X-H2Sの被写体検出は、犬が遠くにいてファインダーで小さく見える時でも、確実に認識し、誤認識も少なく、犬への追従性も良いが、犬の走る速度が速いと、一瞬 犬からAFポイントが離れる事が時々あるが、AF自体はほとんどピントが合っていた。

Nikon Z9 & AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR IIの被写体検出

 

Nikon Z9の被写体検出は概ね良好で、一度つかんだ犬は安定して追い続けます。時々、犬が遠くファインダーで小さく見える時に被写体検出の誤認識があり、犬の走り出しでピントが合わないケースがいくつかありました。誤認識しているのがわかった時点で、一瞬フォーカスエリアを変更するなど回避方法はありますが、今回はシャッター押すだけでどれくらい撮れるかで比較していたので、誤認識がわかっていても修正せずシャッター押し続けました。

Canon EOS R3 & EF400mm F2.8L IS III USMの被写体検出

EOS R3はHDMIからファインダーの映像を出力できるのですが、出力するとファインダーに何も映らない仕様のため、ファインダー映像の録画はできませんでした。←大きなマイナスポイント

EOS R3の被写体検出は、評判通り良好で、走る犬くらいなら余裕で追い続ける感じです。今回比較したカメラの中では、一番被写体検出が良かったです。値段も他のテストしたカメラとレンズのセットで60万円~130万円くらいですが、このカメラとレンズセットは200万円を超えるので、性能も値段も最高レベルです。

AF性能と連射について

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRのAF性能と連射

 

40コマ/秒で犬を撮影して、その写真を並べて動画にしました。比較の全てのカメラは、電子シャッターで歪みがほぼ無いので電子シャッターで撮影しています。

X-H2Sは、制限無しで電子シャッターで最高40コマ/秒で撮影でき、比較したカメラの中では最高性能です。写真から動画を作っても、とても滑らかな動きの動画になります。40コマ/秒を使う場合は、バッファメモリも多めだと思いますが、あっという間に100枚、200枚撮ってしまうので、メディアはCFexpressカードをオススメします。テスト時は、CFexpressカードとSDカード(超高速タイプ)2種類を入れてましたが、何度かバッファフルになって、SDカードの書込み待ちが出て連射が止まる事がありました。CFexpressカードだけの場合はバッファフルになっても、書込みが早いので連射が止まる事は緩和されると思います。テスト時は、AFの方も、ほぼピントが合っていて、まれに、やや後ピンの写真がある程度です。

X-H2S & XF200mmF2 R LM OIS WRのAF性能と連射

X-H2Sのレンズ違いバージョン。XF200mmF2 R LM OIS WR+XF1.4X TC F2 WR フジノンレンズの最高級レンズだけあって、レベルが違う写りです。AFも良好です。

Nikon Z9 & AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR IIのAF性能と連射

Nikon Z9は、制限無しで電子シャッターで最高20コマ/秒で撮影できます。写真から動画にすると40コマ/秒と比べカクカクしています。Nikon Z9は写真の品質を落とせば、30コマ/秒 120コマ/秒の連射も可能です。AFは被写体検出が思うように機能していれば、正確に合わせ続けます。被写体が遠方にある時の被写体検出が、今回テストしたカメラの中では、やや弱いため誤検出や検出できない場合の対処が必要。

Canon EOS R3 & EF400mm F2.8L IS III USMのAF性能と連射

 

Canon EOS R3は、制限無し(レンズによっては多少あり)で電子シャッターで最高30コマ/秒で撮影できます。制限ありでは195コマ/秒まで可能です。AFは被写体検出は誤検出等ほとんど無く、AFも正確で、今回の比較したカメラの中では一番優秀です。

FUJINONレンズについて

XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

デモ機として、お借りしていたレンズです。35mm判換算で229〜914mmの焦点距離をカバーする超望遠ズームレンズ。この焦点距離ズームレンズとしては、重量1,605gと軽量コンパクト。軽量のため、X-H2Sとのセットで手持ち撮影も楽で、長時間持ち歩くのも苦になりません。600mmの望遠でも手ブレ補正が良く効いていて超望遠域でもフレーミングしやすい。AFの動作は静かで良好。このクラスのレンズとしては、解像度やボケの感じは良い方だと思いますが、大口径望遠レンズを使用している私達からすると、物足りない感じはします。値段が違いすぎるので比べるのは酷ですが。

以下は、XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRで撮影した写真です。

FUJINON XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

FUJINON XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

FUJINON XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

FUJINON XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

XF200mmF2 R LM OIS WR

FUJINONが誇る大口径望遠レンズ。AFの動作は静かで良好。解像度が高くピントが合ってる所はシャープで繊細な描写をし、ボケはなめらかで美しい。大口径望遠レンズ&フルサイズカメラの組合わせを喰ってしまうくらいの描写のレンズです。

以下は、XF200mmF2 R LM OIS WR+XF1.4X TC F2 WRで撮影した写真です。

FUJINON XF200mmF2 R LM OIS WR

FUJINON XF200mmF2 R LM OIS WR

FUJINON XF200mmF2 R LM OIS WR

FUJINON XF200mmF2 R LM OIS WR

総評

今回テストした、X-H2S、Z9、EOS R3 共、積層型イメージセンサー搭載で、高性能なAF、ブラックアウトフリー、歪みが少ない電子シャッター、高速連写機能、高品位な電子ビューファインダー搭載、防塵防滴仕様など申し分ありません。AF性能は、冒頭でも述べたように自分たちの撮影スタイルで撮影しているため、条件を合わせての厳密の比較ではありませんが、何回も撮影してのピント合焦率の歩留まりで判断すると、1位がEOS R3、2位がX-H2SとZ9。1位と2位の差は極わずかな感じでした。実際に撮影した動画を上の方に用意してあるので、AF性能については動画で確認してください。どの機種も撮った写真は、ほとんどピントが合っていました。どのカメラも被写体検出、AF性能、連写性能など、少し前までのカメラでは考えられないほどの、カメラの性能向上を感じました。最近のカメラはファームアップで性能アップや機能追加も多いので、先々性能などが変わる可能性もあります。

FUJIFILM X-H2Sレビュー

X-H2Sで気になった点は、気温が34度くらいの暑い日は、「カメラの温度が上昇しています」と温度警告が頻繁に出ていました。オプションの空冷ファンを取付て「High」でファンを回し続けましたが、気温が高い日では冷却効果は少なく温度警告の頻度が下がる事はありませんでした。飛行犬撮影所の撮影は、連射のみ、次から次へと犬の撮影が続き、1日で1万~2万枚撮影することも少なくない特殊な撮影なので、一般の方の撮影で温度警告が頻繁に出る事は無いと思われますが、猛暑と言われる日の屋外撮影は注意が必要です。一方、EOS R3とZ9はボディが大きいので、ボディ全体で放熱しているのか、同じ環境でも熱の問題はありませんでした。

参考になりましたら。

この記事を書いた人

八木橋 一男
八木橋 一男
ドッグフォトグラファー。飛行犬撮影所 伊豆支部代表
飛行犬撮影会では、主に静岡県・山梨県・長野県・神奈川県西部を担当。
神奈川・静岡・山梨での犬と泊まれる宿での犬の撮影を経て、飛行犬グループに加入。これまで、約4,000頭の犬を撮影。'14年BS日テレ「わんニャン倶楽部」'15年日テレ「シューイチ」に出演。

八木橋への直通連絡先 090-3580-5371